大阪地方裁判所 昭和39年(行ウ)53号 判決 1974年1月16日
大阪市福島区江成町一四四番地
原告
東田一之
大阪市福島区亀甲町一丁目三番地
被告
大阪福島税務署長
横井英男
右指定代理人
細井淳久
同
景山厳
同
砂本寿夫
同
徳修
同
住永満
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一、申立
一、原告
「被告が原告に対し昭和三七年六月三〇日付でした、原告の昭和三四、三五、三六年分の各所得税についての更正処分(いずれも裁決により減額された部分を除く)を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求める。
二、被告
主文同旨の判決を求める。
第二、主張
一、請求原因
1. 原告は運送業を営む者であるが、昭和三四、三五、三六年分の所得税につき、それぞれ総所得金額を別紙第一表1欄記載のとおりとする確定申告をしたところ、被告は昭和三七年六月三〇日付で右各年分の総所得金額につき、第一表2欄記載のとおり更正処分をした。原告は被告に対し異議申立をしたが、被告はこれを審査請求として取扱うのを適当と認め、原告の同意を得て大阪国税局長に送付し、同局長は昭和三九年六月三〇日右各年分の更正をそれぞれ一部取消し、総所得金額を第一表3欄記載のとおりとする裁決をした。
2. しかし、被告の右処分は原告の所得の認定を誤った違法があるから、その取消を求める。
二、被告の認否と主張
1. 請求原因1を認め、2を争う。
2. 原告の総所得金額は、昭和三四年分が金二、三五五、八〇三円、昭和三五年分が金四、二〇二、三〇〇円、昭和三六年分が金四、九七〇、九一五円であり、その明細は別紙第二ないし第四表の被告主張額欄記載のとおりである。
3. 運賃収入金額の推計について
(一) 推計の必要性
原告は、被告の部下職員が行った本件各係争年分の所得税調査に際し、メモ様の帳簿を提示したのみで、しかもその内容は一貫性を欠くものであり、かつ原始記録は保存していないと申立て、質問にも答えず、非協力的であったので、運賃収入金額について推計を行う必要があった。
(二) 推計の方法
原告のガソリン消費量および自動車所有台数と、大阪府トラック協会(旧大阪府貨物自動車協会)の調査にかかる資料とに基づき、以下のようにして運賃収入金額を推計した。
(1) 原告が松籟興産株式会社から仕入れたガソリンの量は、三四年一六、六二八リットル、三五年二二、一九六リットル、三六年三八、八九九リットルであり、これが原告のガソリン消費量である。
(2) 運送業者の年間平均稼働日数は三〇〇日である。
(3) 原告の小型三輪トラックおよび小型四輪トラック(以下単に三輪または四輪という)の所有台数は、第五表から明らかなように
三四年 三輪 六台 四輪 一台
三五年 三輪 五・七五台 四輪 一・二五台
三六年 三輪 四・一五台 四輪 三・〇八台
である(端数は所有月数を台数に換算したものである)。
(4) 大都市における小型貨物自動車の平均実働率(所有台数に対する実働台数の割合)は、三輪が八三・九パーセント、四輪が八五・三パーセントであるから、これをそれぞれ(3)の所有台数に乗じて計算すると、原告の年間平均自動車実働台数は、三四年五・八八台、三五年五・八八台、三六年六・一台となる(第六表1)。
(5) 小型貨物自動車一台の走行粁数一粁当りのガソリン消費量は〇・一三リットルであるから、ガソリン一リットル当りの自動車走行粁数は七・六九粁となるが、大都市における実車率(総走行粁数に対する実際に貨物を運搬する走行粁数の割合)は、三輪が五四・六パーセント、四輪が五六・五パーセントであるから、これを乗じて、ガソリン一リットル当りの実車走行粁数を計算すると、三輪は四・一九粁、四輪は四・三四粁となる。そこでこれを原告にあてはめ、三輪と四輪との比率により加重平均すると、ガソリン一リットル当りの実車走行粁数は、三四年四・二粁、三五年四・一粁、三六年四・二四粁となる(第六表2)。
(6) 大都市における小型貨物自動車一台の一日の平均運行回数は、三輪が四・四回、四輪が四・一回であるので、これを原告に適用し、加重平均方式で原告の平均運行回数を計算すると、三四年四・三五回、三五年四・三三回、三六年四・二六回となる(第六表3)。
(7) 以上の資料に基づき、まず年間ガソリン消費量を年間稼働日数と実働台数で除して、実働一台一日当りのガソリン消費量を得、これをガソリン一リットル当り実車走行粁数に乗じ、一台一日の平均運行回数で除して、運行一回一台の実車走行粁数を計算すると、三四年九・〇七粁、三五年一二・二三粁、三六年二一・一五粁となる(第六表4(A))。
(8) 大阪府貨物自動車協会発行の運賃早見表によれば、当時の運賃はつぎのとおりである。
(イ) 粁程八粁をこえ一〇粁までの場合
積載量 七五〇キログラムまで 七四〇円
一〇〇〇キログラムまで 八四〇円
平均 七九〇円
(ロ) 粁程一二粁をこえ一六粁までの場合
積載量 七五〇キログラムまで 一〇七〇円
一〇〇〇キログラムまで 一一九〇円
平均 一一三〇円
(ハ) 粁程二〇粁をこえ二四粁までの場合
積載量 七五〇キログラムまで 一四六〇円
一〇〇〇キログラムまで 一六一〇円
平均 一五三五円
そこで三四年分には(イ)を、三五年分には(ロ)を、三六年分には(ハ)をそれぞれ適用し、これに一台一日の平均運行回数、年間平均稼働日数、実働台数を乗じて、年間の運賃収入総額を求めると、三四年は金六、〇六一、一〇四円、三五年は金八、六二九、四八八円、三六年は金一一、九三六、三七〇円となる(第六表5(A))。
4. 車輛の減価償却費および譲渡損失の明細は、第五表のとおりである。
減価償却は、旧所得税法施行規則一二条の一四(昭和三六年政令六二号による改正後は一二条の一五)の規定に従い、定額法により計算した。この場合、残存価額は取得価額の一〇〇分の一〇であり、耐用年数は同規則一〇条三項に基づく「固定資産の耐用年数等に関する省令」別表一により四年(ただし三六年以降は同省令の改正により三年となる)である。
三、被告の主張に対する原告の認否
1. 第二ないし第四表の被告主張額に対する原告の認否主張は、右各表の原告認否・主張額欄記載のとおりである。
2. 第五表中、車種、取得年月、取得価額、譲渡年月、譲渡価額は認める(なお番号5のダイハツ三輪は昭和三六年一〇月三一日までしか使用していない)。譲渡時の簿価、譲渡損失は、番号6、7、8の分のみ認め、その余は争う。
3. 被告の主張3(一)の推計の必要性は争う。同(二)の推計の方法中、(1)のガソリン仕入量、(2)の年間平均稼働日数、(5)の走行一粁当りのガソリン消費量と実車率を認め、その余は否認する。原告の係争三か年分のガソリン仕入量中には、安原運送店安原武次および大谷運輸株式会社から依頼されて、原告の名義で仕入れて右両名に融通してやったガソリンが含まれており、原告自身のガソリン消費量は毎月一、八〇〇リットル前後でしかなかった。また原告の所有自動車数は七台であるが、常雇の運転手は四名であり、毎日の稼働台数はせいぜい五台である。したがって被告の主張するようなぼう大な運賃収入があがるはずがなく、被告の推計はきわめて不当である。
4. 昭和三四年の貸倒金四五八、五〇〇円(第二表一3(一))は、梅田電気工業所梅田要に対するもので、内金二五八、五〇〇円は運賃および立替金、内金二〇〇、〇〇〇円は手形により融通した金額であり、同人の倒産によりいずれも回収不能となっている。
第三、証拠
一、原告
1. 甲第一号証、第二ないし第四号証の各一、二、第五第六号証を提出する。
2. 証人大谷一夫、安原武次の各証言と原告本人尋問の結果を援用する。
3. 乙第一二、第一三、第一七号証の成立は不知、その余の乙号各証の成立を認める。
二、被告
1. 乙第一ないし第四号証、第五号証の一ないし一〇、第六号証の一ないし八、第七、第八号証の各一、二、第九ないし第一三号証、第一四号証の一ないし四、第一五ないし第一七号証を提出する。
2. 証人望月健一郎、徳修、高橋光生の各証言を援用する。
3. 甲号各証の成立(第二ないし第四号証の各一、二は原本の存在と成立)を認める。
理由
一、処分の経過
請求原因1の事実は当事者間に争いがない。
二、収入金額
1. 運賃収入の推計
(一) 証人望月健一郎の証言によれば、原告は本件各係争年分の運賃収入の実額を把握するに足る帳簿書類等を備え付けておらず、そして他にこれを明らかにする資料の提出もなかったことが認められるから、被告において推計を行う必要があったことは明らかである。
(二) 被告の主張する推計方式は、原告のガソリン消費量とトラック所有台数とを基礎として、一台一日当りのガソリン消費量を計算し、ガソリン一リットル当りの実車走行粁数、一台一日の平均運行回数などから、運行一回一台の実車走行粁数を算出し、これに基づき年間運賃収入金額を得ようとするものであるが、運賃収入は自動車の実車走行粁数にほぼ正比例し、またその走行粁数はガソリン消費量にほぼ正比例する関係にあると考えられるから、被告の採った方式は運賃収入の推計方法として一般的に合理性を有すると認めるべきである。
(三) 右推計方式による運賃収入金額の算定過程はつぎのとおりである。
(1) 年間ガソリン消費量
原告が松籟興産株式会社から仕入れたガソリン量が、三四年一六、六二八リットル、三五年二二、一九六リットル、三六年三八、八九九リットルであることは、当事者間に争いがない。
ところが、成立に争いのない乙第三、第四号証、証人安原武次、大谷一夫の各証言および原告本人尋問の結果によると、原告は当時、原告の経営する丸一運送店から独立して安原運送店を始めた安原武次、および原告とかねて取引関係のあった大谷運輸株式会社(代表取締役大谷一夫)から依頼されて、原告名義で仕入れたガソリンの一部を右両名に融通していたことが認められるので、その期間と量を検討する必要がある。
まず証人安原武次の証言では、同人が原告から供給を受けたガソリンの量を毎月三〇〇リットルとも五〇〇リットルともいい、きわめてあいまいであるが、右乙第四号証によると、同人は昭和四一年七月大阪国税局事務官の質問に答えて、昭和三四年七月頃から昭和三六年頃まで毎月二〇〇リットルぐらいの融通を受けたと述べており、後者の方が信用に価いする供述と認められるので、これを採用する。
つぎに証人大谷一夫は、大谷運輸が原告からガソリンの融通を受けるようになった時期を昭和三五年か三六年頃というのみで、数量についてはほとんど記憶していないが、右乙第三号証によると、同人は昭和四三年六月大阪国税局事務官からこの点につき質問を受けた際には、その量は一か月一、五〇〇ないし二、〇〇〇リットルであったと供述している。他方、証人高橋光生の証言により真正に成立したと認められる乙第一七号証に基づき原告の月別ガソリン仕入量を検討すると、昭和三六年六月までは多くても二〇〇〇リットル台であったのに、同年七月以降は毎月四〇〇〇リットル台に急増していることが明らかであり、この事実をあわせ考えると、大谷運輸が原告からガソリンを融通してもらうようになったのは昭和三六年七月以降であり、その量は毎月二〇〇〇リットルぐらいと推認するのが相当である。
そうすると、原告のガソリン仕入量のうち、原告自身の営業にあてられた消費量は、
(イ) 三四年は一六、六二八リットルから一、二〇〇リットル(安原へ毎月二〇〇リットル六か月分)を差引いた一五、四二八リットル
(ロ) 三五年は二二、一九六リットルから二、四〇〇リットル(安原へ毎月二〇〇リットル一二か月分)を差引いた一九、七九六リットル
(ハ) 三六年は三八、八九九リットルから一四、四〇〇リットル(安原へ毎月二〇〇リットル一二か月分、大谷運輸へ毎月二、〇〇〇リットル六か月分)を差引いた二四、四九九リットル
となる。
(2) 年間稼働日数
運送業者の年間平均稼働日数が三〇〇日であることは当事者間に争いがなく、原告がこれと異なる特殊事情を有したことの主張立証はない。
(3) 自動車所有台数
原告の所有した各トラックの取得年月、譲渡年月が第五表記載のとおりであることは当事者間に争いがなく、これによれば、原告の係争各年におけるトラック所有台数は請求原因3(二)(3)記載のとおりとなる(なお原告は第五表の番号5の自動車は昭和三六年一〇月三一日までしか使用しなかったと主張するが、そのように認むべき証拠はない)。
(4) 自動車実働台数
成立に争いのない乙第二号証(大阪府トラック協会の前身大阪府貨物自動車協会作成の「一般区域貨物自動車運送事業運賃料金変更申請付属資料」)によると、大都市における小型貨物自動車の平均実働率は、三輪が八三・九パーセント、四輪が八五・三パーセントであることが認められる。そこで原告の所有台数に右実働率を乗じて実働台数を求めると、三四年五・八八台、三五年五・八八台、三六年六・一台となる(第六表1)。
原告は、常雇の運転手は四名であり毎日の稼働台数はせいぜい五台であったと主張するが、成立に争いのない乙第七号証の一、二によると、昭和三五年中における原告の雇傭運転手は少ない月で四名、多い月だと一二名に達し、さらに原告本人尋問の結果によれば、原告とその息子も常時運転をしていたことが認められるから、右実働台数の認定は決して多きに過ぎるものではない。
(5) ガソリン一リットル当りの実車走行粁数
小型貨物自動車一台の走行一粁当りのガソリン消費量が〇・一三リットルであることは争いがなく、これから逆算すると、ガソリン一リットル当りの自動車走行粁数は七・六九粁となるところ、大都市における実車率は三輪が五四・六パーセント、四輪が五六・五パーセントであることも争いがないので、これを乗じてガソリン一リットル当りの実車走行粁数を計算すると、三輪四・一九粁、四輪四・三四粁となり、原告の係争各年における三輪と四輪の所有比率によりこれを加重平均して、ガソリン一リットル当りの実車走行粁数を求めると、三四年四・二粁、三五年四・二一粁、三六年四・二四粁という数値が得られる(第六表2)。
(6) 一台一日の平均運行回数
前示乙第二号証によれば、大都市における小型貨物自動車一台の一日の平均運行回数は、三輪が四・四回、四輪が四・一回であることが認められ、前同様加重平均方式により原告の一台一日の平均運行回数を計算すると、三四年四・三五回、三五年四・三三回、三六年四・二六回となる(第六表3)。
(7) 運行一回一台の実車走行粁数
以上確定した数値に基づき、まず(1)の年間ガソリン消費量を(2)の年間稼働日数と(4)の実働台数で除して、実働一台一日当りのガソリン消費量を求める。そしてこれを(5)のガソリン一リットル当り実車走行粁数に乗じ、(6)の平均運行回数で除して、運行一回一台の実車走行粁数を求めると、三四年八・四三粁、三五年一〇・九粁、三六年一三・三一粁となる(第六表4(B))。
(8) 運賃収入総額
成立に争いのない乙第一号証(大阪府貨物自動車協会発行の「貨物自動車運賃早見表」)によれば、本件係争各年当時の重量制運賃はつぎのとおりである。
(イ) 粁程八粁を超え一〇粁までの場合
(a) 積載量 七五〇キログラムまで 七四〇円
(b) 一〇〇〇キログラムまで 八四〇円
(c) 一五〇〇キログラムまで 一〇三〇円
(d) 二〇〇〇キログラムまで 一二二〇円
(ロ) 粁程一〇粁を超え一二粁までの場合
(a) 積載量 七五〇キログラムまで 八六〇円
(b) 一〇〇〇キログラムまで 九七〇円
(c) 一五〇〇キログラムまで 一一八〇円
(d) 二〇〇〇キログラムまで 一三九〇円
(ハ) 粁程一二粁を超え一六粁までの場合
(a) 積載量 七五〇キログラムまで 一〇七〇円
(b) 一〇〇〇キログラムまで 一一九〇円
(c) 一五〇〇キログラムまで 一四三〇円
(d) 二〇〇〇キログラムまで 一六七〇円
原告の所有トラックは一トン車と二トン車が半々ぐらいである(原告本人尋問の結果)が、本件では積載量を控え目に見て、右(イ)(ロ)(ハ)とも(a)(b)のみの平均値をとり、(イ)の場合(三四年はこれにあたる)の運賃は七九〇円、(ロ)の場合(三五年はこれにあたる)の運賃は九一五円、(ハ)の場合(三六年はこれにあたる)の運賃は一一三〇円と認定する。そしてこれに一台一日の平均運行回数、年間平均稼働日数、自動車実働台数を乗じて、年間の運賃収入総額を求めると、三四年は金六、〇六一、九八六円、三五年は金六、九八八、八七九円、三六年は金八、八〇九、二五四円となる(第六表5(B))。
2. 荷造材料収入
各年の荷造材料収入金額は当事者間に争いがない。
三、必要経費
1. ガソリン代
前示乙第一七号証によれば、原告が仕入れたガソリンの代金は、三四年五九四、七二二円、三五年八四一、四八六円、三六年一、五七三、四九一円であるが、このうち前記二1(三)(1)で認定した安原と大谷運輸への融通分の代金は原告の必要経費とはならないから、これを差引かねばならない。右各年の仕入代金額を仕入量で除して一リットル当りの単価を求め(三四年三五円七六銭、三五年三七円九一銭、三六年四〇円四五銭となる)、各年の融通分の価額を算出し、これを仕入代金額から差引くと原告の必要経費に計上すべきガソリン代は三四年五五一、八一〇円、三五年七五〇、五〇二円、三六年九九一、〇一一円となる。
2. 車輛減価償却費
第五表中、車種、取得年月、取得価額、譲渡年月はいずれも当事者間に争いがない。
減価償却の方法につき原告から何らかの届出があったとは認められない本件においては、旧所得税法施行規則一二条の一四(昭和三六年政令六二号による改正後は一二条の一五)の規定に従い定額法によるべきであり、この場合残存価額は取得価額の一〇〇分の一〇、耐用年数は同規則一〇条三項に基づく「固定資産の耐用年数等に関する省令」別表一により四年(ただし三六年以降は同省令の改正により三年となる)であり、これにより計算すれば、償却額は第五表D、E、F欄記載のとおりであり、三四年八〇〇、三二四円、三五年八四六、一一一円、三六年一、三〇二、三八八円となる。
3. 貸倒金(三四年分)
原告本人尋問の結果によれば、原告の梅田電気工業所梅田要に対する運送賃および立替金計二五八、五〇〇円が同人の倒産により回収不能となっていることが認められ、これは三四年分の貸倒金と認むべきである。しかしその余の金二〇〇、〇〇〇円については、原告自身の供述も明確でなく、これを貸倒金と認めるわけにはいかない。
4. 雇人費(三五、三六年分)
成立に争いのない乙第九、第一〇号証によれば、原告はその収支計算書において雇人費として、三五年分金一、一八三、五四八円、三六年分金二、一五一、七三七円を計上していることが認められ、これと矛盾する証拠もないので、右計上額をもって原告の右両年分の雇人費と認める。
5. 必要経費中、右に挙げたもののほかはすべて当事者間に争いがない。
四、譲渡損失
1. 三四年および三五年分の譲渡損失については、当事者間に争いがない。
2. 三六年分について
第五表の番号1ないし4、9、10の各自動車の取得年月、取得価額、譲渡年月、譲渡価額はいずれも争いがなく、定額法により償却を行うと、譲渡時の簿価は同表G欄のとおりで、したがって譲渡損失は同表H欄記載のとおりとなり、三六年分の合計は金四六六、六五七円である。
五、結論
以上によれば、原告の総所得金額は、第二ないし第四表の裁判所認定額欄記載のとおり、三四年分金二、一四一、五九七円、三五年分金二、六五二、六七五円、三六年分金二、四二六、二七四円となることは計数上明らかであり、被告のした右各年分の更正はいずれも右に認定した金額の範囲内であって、過大認定の違法はない。
よって原告の本訴請求を棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 下出義明 裁判官 藤井正雄 裁判官 石井彦寿)
第一表 処分経過表
<省略>
第二表 昭和34年分所得計算表
<省略>
第三表 昭和35年分所得計算表
<省略>
第四表 昭和36年分所得計算表
<省略>
第五表 車輛減価償却・譲渡損失計算表
<省略>
注 (1) 被告の主張には156,888円とあるが、違算と認める。
(2) 被告の主張には52,946円とあるが、誤記と認める。
(3) 被告の主張には37,710円とあるが、誤記と認める。
第六表 運賃収入金額推計の計算式
<省略>